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第1回 東京大学クイズ研究会(TQC) 後編

東京大学
東京大学 クイズ研
伊沢 拓司(経済学部 4年生) 鈴木 淳之介(文学部 4年生) 兼村 夏姫(理科二類 1年生)

コミュニケーションハブとしてのクイズ

クイズで、まず着目されるのは「自分」と「問題・解答(知識)」との関係、つまり自分がなにを知っているのか・知らないのかということや、新しい知識を得て自分が解答できる問題を増やしていくことだ。だが、それはクイズの魅力の半分でしかないと伊沢さんはいう。

「クイズの知識には、『クイズ発』の知識と、『クイズ着』の知識とがあり、その両面性・双方向性が、クイズを通じて得られる面白さです」(伊沢さん)

クイズ発の知識とは、クイズや、そのために覚えた知識が人とのコミュニケーションを作るきっかけになる、ということだ。伊沢さんは、クイズをやっていたことによって、コミュニケーションが上達したことを強く意識しているという。

「友だちとの会話でもそうですが、特にゼミの先輩や教授など自分より知識を持っている人とコミュニケートするときに、自分の方に『持ち札』がないと絡みにくいじゃないですか。こちらが一方的に話を聞くだけでは、相手も話しにくいでしょう? でも、クイズで得た知識があったなら、それを発信すれば、それだけでも話を引き出すきっかけになります。きっかけがあれば会話が広がり、相手もどんどん話してくれます。そうするとまた、こちらの知識もどんどん増えていくという具合です」(伊沢さん)

4年生の伊沢さん

4年生の伊沢さん

ただ「問われたことに答える」ことだけではなく、こちらから知識を発信することでさらなる知識や人間関係を広げていくための「ハブ」となるところにも、クイズの面白さの半分があるのではないかと、伊沢さんは考えている。

もちろん、コミュニケーションのハブとしてこちらからきっかけを発信するためには、一定の知識があることが前提となる。これが、前編でも書いたように、伊沢さんが「暗記のための暗記」を否定的に捉えていない理由の2点目である。
まず知識があることが大切、なのだ。

クイズの進み方と学問の進み方

さて、ここは東京大学、日本最高の学問の府である。当然、東京大学クイズ研究会のメンバーは勉強が得意な人ばかりである。気になるのは、クイズをやっていることで、一般的な勉強や学問にも良い影響があるのかという点だ。

「勉強とか学問を全然知らなかった子どものときからクイズに深く親しんだことで、知識というのが知れば知るほどどんどん関連して広がっていくことを、漠然とですが感じていました。『自分には知らないことがたくさんある、まだまだ面白いことがたくさんある』と、その“世界の広さ”みたいなものを、クイズを通じて知ることができたのは、すごく大きかったですね」と伊沢さんはいう。

4年生の伊沢さん

4年生の伊沢さん

「大学で本格的に学問に取り組むことになったときにも、クイズで経験してきた『進み方』と同じことがあると感じていました。わかりやすい例でいえば、僕は経済学部ですが、新聞で得た知識を経済学で活かしたり、逆に経済学で得たメソッドを使って、実際の経済問題を考えたりもできる、ということです。そういうやり方について、クイズですでに経験していたので、『この先に面白いことがあるな』とわかっていたので、学問でも足踏みをしないで前に進むことができたと思います」

伊沢さんの場合は、クイズで経験した知識の広げ方が、学問への取り組みにおいても通用したということである。

理解を早めるフックとしてのクイズ知識

一方鈴木さんは、知識そのものが理解を早めることがある、という点を指摘した。

「クイズが直接、研究している学問の内容と関係あることはあまりありません。ただ、クイズによって広い知識を得ていることで、はじめて聞く話で周りの人が知らないようなことでも『ああ、あのことか』とわかることは、多いと思います。それが、理解を早めたり深めたりすることになるとは思います」

いわば、理解のフックとしてのクイズ知識だ。また、兼村さんも次のように、クイズ知識が学問的な喜びのきっかけになると語ってくれた。

「クイズで様々なことを知りますが、その知識は深いものではありません。それが、たとえば学校の授業で出て、あのときの「○○の法則」とはこういうことだったのかと、くわしく知ったときには、喜びを感じます。名前とか数字とか、表面的な部分だけ知っていたことを、より深く学んで、納得できる感じですね。そういう喜びを感じることが、学問を楽しくしてくれます」

1年生の兼村さん

1年生の兼村さん

「知識の広げ方」という点においても、また、知識そのものの効果という点においても、クイズは学問に、非常に良い影響を与えると言えそうだ。

東京大学クイズ研究会(TQC)について

ここで、東京大学クイズ研究会(東大クイズ研:TQC)について簡単に紹介しておこう。
TQCが生まれたのは、1982年。そのきっかけは、もはや伝説ともなっているテレビ番組「アメリカ横断ウルトラクイズ」(第1回放映は1977年)だ。
同番組をきっかけに、多くの大学にクイズ研究会が生まれ、そのメンバーたちが番組で活躍した。東大クイズ研究会は全国でも有力な大学クイズ研究会のひとつで、田中健一氏(現クイズ作家)など、その後もクイズ界で活躍する多くの実力者を輩出している。

その後、テレビのクイズ番組が減った1990年代後半にはやや活動が下火になる時期もあったが、近年は再び隆盛を見せている。

現在、普段の活動は、週末に1~2日集まって会員が作成してきた問題を試合形式で解きあうことがメイン。もちろん、他人が作ったクイズ問題集を解くこともあるが、基本は自分たちで問題を作って、自分たちで解くという活動スタイルである。
取材日にも、インタビューをしている後ろでは、会のメンバーの皆さんが自作のクイズを出し合って、熱心に競技をしていた。

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多様な個性のメンバーが鍛え合う場

そのTQCの特徴を、伊沢さんと鈴木さんは、次のように説明してくれた。

「他大学のクイズ研では大会で勝つことが目的になっていることが多いのですが、うちはあまりそこに重きを置いていません。それより、各人が各人の好きなことをやれるのが、TQCの伝統ですね。流行に左右されない。各自の裁量にまかせて、いいものを作れという感じです」(伊沢さん)

「TQCは、各人の個性がばらばらで、いろいろな問題が出るので、自分の得意分野ではない問題が出されることが多い。それで、幅広い問題に対応する中で力がつきました。特に入学後すぐは、ついていくのも大変で苦労しましたが、おかげでずいぶん鍛えられました」(鈴木さん)

多様な個性が、自由に活動することが、結果的に強い会を生んでいるのである。

問題作りに必要な気づきの力

解くことと同じく、あるいはそれ以上に問題作り力を入れているのが、東大クイズ研の特徴だ。
そのため伊沢さんも、ほぼ無意識に近いレベルで、クイズ作りのフィルターを通して物事を見ていることが多いという。

「新しいことを知ったときには、『これを問う問題ならこういうワードを入れて、こう組み立てるな』みたいなことは、ほぼ無意識に考えています」

4年生の伊沢さん

4年生の伊沢さん

気になる言葉や、新しい単語などを見つけたら、すぐにスマホにメモしたり、ウェブサイトを見ているときならブラウザにブックマークしたりして記録する。メモやブックマークは、これを失ったらパニックになりそうなくらい、膨大な量をストックしている。

その一方で、他の人ならクイズにしないような物事を、あえてクイズ的な視点で見てみたらどうなるかを、意識的に考えることもよくあるという。手垢にまみれたようなものでも視点を変えて見ることで面白いものに生まれ変わる、着眼点を多様にすることの大切さも、クイズを通して磨かれた感覚のひとつである。

良いクイズ問題とは

クイズは、問いと答えの問題形式になっていればなんでもいいというわけではない。クイズに深くコミットしている者なら誰でも、クイズ問題に対する明確な美意識を持っているという。たとえば、伊沢さんの場合は次のようなものだ。

「良いクイズ問題というのは、まずオリジナリティがあって、しかも独りよがりではない問題です。そして、文章がきれいであること。解いていくときに、余計なことを考える必要がなく、ひっかかりのない日本語であることを、非常に重視します。きれいな文章であることは、ある意味で内容よりも重要なことだと僕は考えています」

その上で、人によってはユーモアを含んだ「笑わせにくる」問題が得意だったりなど、問題の作り方には個性が出るという。クイズの問題は、味気ない知識のテストではなく、作り手の個性が顕著に表れる「表現」の一種なのだ。

どうすればクイズに強くなるのか

今回取材に応じてくれた3人の皆さんは、いずれも一流のクイズプレイヤー、歴戦のクイズ勇者たちだ。
彼、彼女たちのようにクイズに強くなるには、さらには、知識を蓄え、活用し、学問や仕事に活かすには、どうすればいいのだろうか?

鈴木さんは、一般的に言うのは難しいと前置きしつつ、こう語ってくれた。

「クイズには、過去の歴史でよく出題されてきた定番の問題があります。たとえば、『第○○回の△△賞を受賞した××』みたいな問題では、これが出されるという傾向があるのです。そういった、クイズの歴史と傾向を踏まえた上で反復練習をすることが対策の基本です」

4年生の鈴木さん

4年生の鈴木さん

過去問を調べて対策を立てるというのは、大学入試や資格試験などの受験勉強でも王道だが、やはりそうした地道な努力なくして、成功はありえないということだ。

もっとも、クイズのネタには、最近生まれた新しい物事も使われる。それらについては、やはりテレビや、ネットなどが情報源となるそうだ。

鈴木さんは「王様のブランチ」のような情報バラエティ番組を必ずチェックしている。そして、そこで出されたエピソードで、自分が面白いと感じたことを「クイズ」にして、覚えておくという。クイズにして覚えておくというのが、いかにもクイズマニアならではだが、鈴木さんによれば、問題と答えのセットにして覚えていた方が、ずっと記憶に残りやすいという。

クイズに強くなるための意外な効果をもつ「あの方法」

兼村さんは、「問題を音読することはとても大切です。問題を何度も音読して、身につけました」と、音読することの効果を強調した。

英語などの語学学習においては、多くの指導者が音読の効果について触れている。たとえば、同時通訳の草分けであり日本の英語教育にも多大な貢献をした國弘正雄氏は「只管朗読」、すなわち、ひたすら何百回も音読することこそが、英語上達の最上の方法であると述べている。

意外なことに、クイズにおいても「音読」が大きな効果をもたらすという。鈴木さんも兼村さんの言葉を受け「たしかに試合でも、クイズの問題を読み上げるリズムみたいなものをつかまないと、伸びが悪いと思います」と同意した。

1年生の兼村さんと4年生の鈴木さん

4年生の鈴木さんと、1年生の兼村さん

音読は知識を固める効果だけではなく、問題文が読み上げられるリズム、テンポによって、問題文の流れがどう続くのかを予測して、素早く回答ができるようになる効果もあるそうだ。

そして、鈴木さんの経験上、クイズの問題の読み上げ方がうまい人は、回答の実力、大会での成績も良いらしい。

「たとえば、『聖徳太子が小野妹子を遣隋使として送った際、その返礼使として日本に派遣された隋の使者は誰?』という問題なら、『返礼使』が回答につながるポイントなので、その手前から気持ちゆっくりめで強めに読む、といった感じですね」

ここからわかるのは、クイズの強さとは、単に知識の多寡によって決まるわけではないということだ。クイズの歴史や傾向を踏まえて、問題を予測することや、問題文の文脈、リズムなどから、先を読む技術なども、試合での強さに大いに関係しているのである。そういうところが、クイズの深さでもある。

まとめ

2時間近くにわたるインタビューで、様々な興味深い話を聞かせていただいたが、3人に共通して感じられたのは、貪欲なまでの知識への欲望である。
「もっと多くのことを知りたい、知識の世界を広げたい」。その純粋かつ、強い想いこそが、知識を広げる唯一の原動力ではないか。そのための技術論や方法論は、どうでもいいとはいわないが、付随的、補足的なもののような気がする。
そして、実利的な目的とは直接には関係しないからこそ、純粋な知識の喜びを感じさせてくれる「クイズ」というフィールドの魅力も、再確認させてもらった。

東京大学 クイズ研 メンバー
伊沢 拓司(経済学部 4年生)
伊沢 拓司さん(経済学部 4年生)

鈴木 淳之介(文学部 4年生)
鈴木 淳之介さん(文学部 4年生)

兼村 夏姫(理科二類 1年生)
兼村 夏姫さん(理科二類 1年生)

取材・構成・執筆
椎原 芳貴
椎原 芳貴有限会社ハビタス / ハビタス編集部 エディター)

クライミングと筋トレが趣味の肉体派中年エディター。
ブレインは弱め。本企画の取材を通じて少しでも鍛えるコツがつかめれば……。

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